意外と知らないギターの歴史

意外と知らないギターの歴史~アコギやエレキはどうやってできたのか~

ギターの歴史を知ろう!

バンドには欠かせない楽器、それがギターです。ロックやポピュラーミュージックやジャズ以外にもクラシックやフラメンコなど幅広い音楽ジャンルで使われる楽器で、ギターから楽器を始める人も多いのではないでしょうか。

そんな身近な楽器のギターですが、意外とそのルーツや歴史などは知る機会がないのでしょうか。
今回はギターの歴史についてお話ししましょう。

ギターってどんな楽器?

古びたレスポール
古びたレスポール

ポピュラーすぎて今更説明は不要かもしれませんが、改めてギターについて簡単におさらいしてみましょう。

ギターは6本の弦(7弦や12弦ギターなど例外もあります)を指かピックで弾いて音を鳴らす撥弦楽器です。弦楽器でも弦をはじいて音を鳴らすタイプの楽器を撥弦楽器といいます。

その音色や音の出し方などは弦やボディの材質や形状、音響機構によってさまざまあります。音の出方は基本的に2種類で、アコースティックギターはアンプなしに音が鳴る、エレキギターはアンプを通して音が出るギターとなります。

ギターはポピュラーミュージックからクラシック、民族音楽に至るまで幅広い音楽で使用される楽器です。それぞれの音楽の演奏に特化したギターなどがあり、例えばクラシックの演奏に特化したクラシックギターやフラメンコの演奏に特化したフラメンコギターなどがあります。

ギターの起源

それではギターの歴史について見ていきましょう。現在のギターの原型は19世紀以降に発明されたものなのですが、そのルーツは紀元前にさかのぼるといわれています。

最古の撥弦楽器

諸説ありますが撥弦楽器の始まりは弓の弦をはじきならしたことに始まるといわれています。楽器として確認できるのは紀元前3700年ころの古代エジプト文明の壁画や出土品に、弓状の撥弦楽器と思われるものが確認できます。

ただし撥弦楽器ではあるものの、どちらかというとハープの形状に近いものだったりします。

串状ネックリュート

撥弦楽器という観点で考えるとギターの直接の先祖はリュートという楽器といわれていますが、紀元前30世紀から紀元前20世紀ころには串状ネックリュートというボディがくびれたリュートが存在していたと考えられています。実際に紀元前20世紀から紀元前10世紀ころの各文明の出土品からは、胴のくびれの有無はあるにしろネックの長いロングリュートの演奏が確認されています。

ヨーロッパへのリュートの伝来

リュートの伝来には諸説ありますが、8世紀ウマイヤ朝によるイベリア半島侵攻の際にムーア人によってもたらされた説や東ローマ帝国拡大に伴い伝来したなどと言われています。

どのようなルートで伝播したのかははっきりわかっていないのですが、14世紀から15世紀ごろにはヨーロッパでポピュラーな楽器になっていったといわれています。

ギターの誕生

ヨーロッパ各地ではリュートが伝わり定着していったのですが、スペインでは歴史的背景からほかの西欧諸国と違いリュートが定着しなかった代わりに、中世フィルドという擦弦楽器を祖先に持つビウエラという弦楽器が進化し発展していったとされます。

一口にビウエラといっても、この当時ビウエラと呼ばれていた楽器の範囲はかなり広く、擦弦楽器や撥弦楽器などいろいろあったといわれています。このうち撥弦楽器であるビウエラにリュートの要素を取り込み、スペイン舞踊(フラメンコ)の独特のリズムに特化するように進化した楽器がギターの誕生といわれています。現在ギターの存在が確認できるもっとも古い文献は13世紀のもので、このころにはギターが存在していたようですがだれがいつ発明した等の詳しいことは何もわかっていません。

スペイン語でギターはギターラと呼ばれており、記録によるとギターラ・ラティナ(ローマ人のギターラ)やギターラ・モリスカ(ムーア人のギターラ)などの種類もあったようです。ただし14世紀から15世紀に多くの文献にギターラの名前は確認できるのですが、実際にそれが具体的にどういう形状の楽器かがわからずじまいです。印刷技術が発展した16世紀以降になって初めて、楽器の名前とその形状が確認できる文献を残せるようになったということになります。

ギターの改良

最初期のギターは4弦の撥弦楽器であり、3弦が2対の複弦と1つの単弦で構成されていました。ルネッサンス期のギターなのでルネッサンスギターと呼ばれていました。

そこから音域や音量を増やすべく16世紀から17世紀にかけて4弦が5弦に変化し、バロック期に発明されたギターのためバロックギターと呼ばれました。ただこのころのガット弦はその製造法から品質が安定せず、低音用の弦を作ることが困難でした。

17世紀になるとガットを芯に絹糸または糸状の金属を巻き付ける巻線が開発されました。これにより音域が広がり、複弦である必要もなくなったため新たなギターの進化の足掛かりとなります。18世紀後半に現在のギターのような6弦かつ丸いサンドホールを持ったギターが発明されたとされています。

クラシックギターの完成

部屋に横たわるクラシックギター
部屋に横たわるクラシックギター

18世紀末から19世紀にかけて6弦ギターは更なる発展を遂げます。大きな変化は3つあり、

  1. ガット製のフレットをネックに巻き付けていたものから、独立した指板に金属製のフレットを打ち付けてネックに張り付けることによって耐久性や音質や音量が向上した。
  2. ペグが木製のものからギア式のものが発明された。
  3. ブレーシング(力木、ボディ内部に取り付けられた棒状の木材)がリュートと同じく水平方向のみだったもの(ラダーブレーシング)が、放射状に取り付けられたファンブレーシングが導入され音量が向上した。

これにより19世紀にはこれらの技術を用いた小型中型のギターが作られるようになり、19世紀ギターと呼ばれました。

19世紀ギターをさらに大きな音を出すために19世紀ギターを改良したのがスペインのギター製作家であるアントニオ・デ・トーレスです。19世紀後半にはファンブレーシングを確立し、サウンドホールにトルナボスと呼ばれる漏斗状の金属を設置し、ボディを大型化し弦の長さを65cmにすることによってコンサートホールで演奏するに十分な音量を出すことのできるギターを製作し、クラシックギターの原型を完成させました

フォークギターの発明

楽器店に並ぶアコースティックギター
楽器店に並ぶアコースティックギター

現在アコースティックギターと呼ばれるギターは大体フォークギターをさしますが、フォークギターの基礎を開発したといわれているのはクリスチャン・フレデリック・マーティンです。

Xブレーシングの開発

クリスチャン・フレデリック・マーティン・シニア氏(マーティン)はもともとオーストリア・ウィーンでギター職人のもとで修行したドイツ在住のギター製作家でしたが、いざこざから1833年にアメリカのニューヨークに移住しギター製作を続けました。

マーティンは1850年代にブレーシングをX状のXブレーシングを開発しました。この力木の構造はファンブレーシングより音の繊細さはかけるものの、ボディの耐久性が著しく向上し、ガット弦よりも張力が高いスチール弦を使用できるようになりました。ただし実際にマーティン社(C.F.Martin&Co:マーティンが創業したギター製作会社)がスチール弦のフォークギターを製作したのは彼の死後1922年と言われています。

ラーソンブラザーズのスチール弦ギター

初のスチール弦のギターは1880年代にスウェーデンからアメリカのシカゴに移住したカール・ラーソン(兄)とオーガスト・ラーソンのラーソン・ブラザーズ(Larson Brothers)によって製作されました。彼ら兄弟はギターを大音量する際にマンドリンのスチール弦に注目し、Xブレーシング構造でフラットトップのスチール弦ギターを完成させました。

アーチトップギターの発明

ラーソン兄弟がフラットトップギターを発明した頃を同じくして、オーヴィル・ヘンリー・ギブソンがアーチトップのフォークギターを発明します。マーティンやラーソン兄弟のアプローチとは違い、ギブソンは削り出しによるギター製作を行いました。これはもともとギブソンがヴァイオリン製作の技術を持っていたからであり、その技術は当時流行していたマンドリン製作にも生かされ、さらにフォークギターに応用されていきました。

フォークギターの普及

フォークギターの普及の背景にはアメリカの文化や時代の流れが影響しているといわれています。アメリカの黒人のカントリーミュージックの楽器であるバンジョーがスチール弦であり、20世紀前半ブルースなどのカントリーミュージックが発展流行していくのと並行して、スチール弦であるフォークギターの需要も拡大し普及していくことになります。

エレキギターの発明

楽器屋さんの壁にかけられたギター
楽器屋さんの壁にかけられたギター

ホールなどの演奏場所の拡大や、よりラウドな音楽の出現により大音量のギターは求められ続けました。スチール弦のフォークギターの後も様々な大音量化のアプローチは行われ、金属の共鳴板を取り付けたリゾネーターギターが生まれましたが、構造的な問題でアコースティック機構での大音量化には限界が訪れることとなります。

エレキギターの誕生

20世紀初頭から、アコースティック機構での大音量化ではなく根本的に違った方向での大音量化の研究が行われるようになりました。それはギター弦の振動を電気信号に変換し、アンプにつなぐことによって増幅するという発想です。

エレキギターの発明に関しては諸説あるのですが、1931年にアメリカ人のジョージ・ビーチャムがタングステンのピックアップを搭載したスチール弦アコースティックギターを発明したのが初とされています。1932年にはビーチャムはスイス系アメリカ人のアドルフ・リッケンバッカーと共同で会社を設立し、通称フライパンと呼ばれるエレキギターを製造販売しました。

ソリッドギターへの発展

横たわるテレキャスター
横たわるテレキャスター

エレキギターは徐々に人々に受け入れられ、ギブソン社など他メーカーによってエレキギターが作られるようになります。しかし初期のエレキギターの欠点として、フルアコ(ボディの中が完全に空洞になっているエレキギター)のためハウリングが起こりやすく大音量が必要なノイジーな場面での演奏に難がありました

それを克服するべく共鳴胴を持たずハウリングが起こりにくいソリッドボディが考案され、1949年にアメリカ人のレオ・フェンダーによってソリッドギター(テレキャスター)が発表されました。1952年にはギブソンからレスポールが、1954年にフェンダー社からストラトキャスターが発売されると人気を博しロックなどのバンド演奏でなくてはならないものとなっていきました。

まだまだ続くギターの歴史

いかがでしたでしょうか。今回はギターの歴史についてお話ししました。

クラシックギターの本場ヨーロッパ(主にスペイン)からアメリカにギターが持ち込まれたことによってスチール弦と出会いフォークギターが生まれたり、より大きなホールで演奏することが増えたことによって根本的な音の出力方法の変化が考案されたりと、時代や場所や音楽シーンの変化に沿ってギターは様々な変化や発展を遂げてきました

アコースティックギターもエレキギターも20世紀後半にはほぼ現在の形に完成されていますが、科学的な構造や原料のアプローチなど様々な努力が日々行われています。この先どのような音楽シーンの変化が訪れるかは誰にもわかりませんが、それに伴ってギターが変化を遂げるかもしれないと思うと興味深いですよね。ぜひ参考になれば幸いです。

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