音楽産業の変遷と進化

音楽産業の変遷と進化。楽曲の楽しみかた、聴きかたをアップデートする

変わっていく音楽産業

音楽が私たちの身近なもので、生活の一部なのは多くの人にとって間違いない事実だと思います。
ですが音楽を聴く形というのはたびたび変化し、ここ数年でも大きく変化しています。
そんな音楽産業はどこからきてどこへ行くのか。今回は音楽産業の歴史をお話ししましょう。

音楽産業の原点

楽曲を記号などで表す楽譜
楽曲を記号などで表す楽譜

楽曲でお金を儲ける、いわゆる音楽産業が成立したのはいつ頃のことでしょう。多くの人はレコードの発明を思い浮かべると思いますが、実はもっと以前にも音楽産業が成立していました。
それは音楽そのものではなく楽譜ビジネスです。

時は16世紀の中世、もちろん音楽を記録するメディアなんてまだまだ発明されていませんのでメディアとして使えるのは紙です。そのため楽譜をレンタルして使用料を得たり、楽譜を販売したりする会社が成立することとなります。それが音楽出版社です。

音楽出版社は17世紀以降バロック時代で貴族相手にビジネスとして成長していくことになります。のちに専業革命後、音楽が大衆のものになっていったことによって、楽譜は市場に流通していくこととなります。

つまり、この時代の音楽はミュージシャンが演奏する音楽を生で聴くか、自分たちで演奏するしか音楽を聴く手段はなかったのです。

レコードの登場

プレイヤーで再生するレコード
プレイヤーで再生するレコード

19世紀末期になると音楽を録音する技術が発明され、音楽の大衆化をより進めていき音楽産業が発展していくこととなります。
そう、レコードの発明です。

録音技術の発明

蓄音器(フォノグラフ)
蓄音器(フォノグラフ)

世界で初めて音の記録システムを作ったのはフランスのレオン・スコットで、振動を紙に記録するものでフォノトグラフと呼ばれました。ただし、その記録紙から音を再生する手段がなかったので実用化には程遠いものでした。

初めて再生ができる記録装置を作ったのはアメリカの発明の父トーマス・エジソンで、銀箔を貼った円筒を回転させその振動を溝に掘って記録し、その溝を針でなぞって振動板に振動を伝え再生する蓄音器(フォノグラフ)が発明されました。ただしフォノグラフはそれほど音の再現性、音質がいいわけではなくどちらかというと音声を記録・再生する用途のものでした。

レコードの原型グラモフォン

エジソンのフォノグラフ発明からたった10年後にはより音楽の録音再生に適したレコードシステムが登場します。ドイツ出身でアメリカの発明家エミール・ベルナリーは特許回避のため円筒ではなく平たい円盤に記録し再生するグラモフォンを発明したのですが、結果的に収納性の向上、音質の向上が起こり音楽用メディアとしてより優れたものとなりました。

その後円盤式のレコードが市場を制することになりますが、円の性質上中に行けば行くほど周の長さが短くなっていくために音質に差が出るなどの欠点もありました。

また、初期のレコードであるシェラック盤は割れやすく耐久性に難があったため、扱いにくい貴重品で一部の市民にしか浸透しませんでした。

レコードの発達

そんな中1947年にポリ塩化ビニルで作られたレコード盤(ビニール盤)が実用化されると状況が一変します。

ビニール盤はシェラック盤と比べ割れにくくしかも軽く、またレコード技術も発達しより精密な記録ができるようになったため、ビニール盤が主流となってなり多くの市民に楽しまれるものとなっていきました。従来のレコードサイズのまま長時間の記録ができるようになったため、LP盤とも呼ばれることとなります。

このLP盤やシングル曲を収録し小型化したシングル盤は革新的でしたが、ほこりや傷に弱く周りの振動に影響されやすい、また再生を重ねると溝の劣化からの音質の劣化といった問題は解消できないままでした。

カセットテープの登場

散らばったカセットテープ
散らばったカセットテープ

円盤式レコードとは別に、20世紀中ごろには磁気を帯びたテープに音声を記録する技術が実用化されました。ノイズが少なく安価でしたが当初の磁気記録テープは大きく、リールが剥き出しで利用者が直接リールからテープを引き出して機械に装着・脱着するオープンリールだったため扱いにくいものでした。


その後1962年にオランダのフィリップス社が小型の音楽用磁気記録テープであるコンパクトカセットを開発しました。

そして1965年にコンパクトカセットの特許を無償公開したため、その小型での扱いやすさや安価さから多くのメーカーがコンパクトカセットで音楽を生産し、音楽用メディアとして普及しました

コンパクトなカセットプレーヤー
コンパクトなカセットプレーヤー

中でも1979年にSONYから登場したWALKMAN(ウォークマン)は革命的で、コンパクトカセットを持ち歩きどこでも再生できる、ヘッドフォンで周りを気にせずに聞けるということで爆発的なヒットを生み出しました。この音楽をポータビリティかつパーソナルなものにしたWALKMANはその後の人々の音楽の楽しみ方に大きな影響を与えました

光ディスクの発明

音楽といえばレコードかカセットテープという時代が続きますが、ついに新たな技術が登場することになります。

CD(コンパクトディスク)の流行

CDに音声データを書き込むCD-ROMドライブ
CDに音声データを書き込むCD-ROMドライブ

1982年にはいよいよCDが登場します。SONYとフィリップス社が共同開発したこの円盤型メディアは、アナログ方式で録音再生されたレコードとは違い、音楽をデジタル情報化したものを記録したもので大きな変化をもたらしました。

CDはレコードの生産ラインと違い新たに設備投資が必要であった点や、デジタルデータのコピーの容易さを懸念して当初はレコード会社には受け入れられませんでした。しかしレコードよりも軽く耐久性に優れ、何よりも小さく収録時間が長いといったレコードに比べ圧倒的に利便性の高いCDが売れないはずもなく、たった2年後の1984年にはCDはレコードの売り上げを追い抜くこととなります。

そこからどんどんCDは音楽用メディアとして拡大していき、1990年代にはCDバブルと呼ばれるCDが売れまくる時代がありました。

また1989年には太陽誘電から発売された家庭用のパソコンでCDに音楽が書き込めるCD-Rが登場します。そして1995年にパソコンのOSでマイクロソフト社のMicrosoft Windows95やCD-ROMドライブ標準搭載により音楽用メディアとして普及していきました。

MD(ミニディスク)の考案

1992年に製品化したMD
1992年に製品化したMD(ミニディスク)

CD普及後もCDラジカセなどの存在もあり、録音メディアとしてカセットテープが依然健在でしたが、1992年にMDが発売されます。若い方はあまり見たことがないかもしれませんが、約七センチ四方のカートリッジにCDよりさらに小さい直径6.4センチほどのディスクが入っているものです。

CDより小さく持ち運びが便利な点や、カセットと違って曲のスキップや曲名などの曲情報をつけることができたことから日本国内では2000年前半ごろまでそれなりに普及することとなり、ポータブルMDプレイヤーなども各メーカーから発売されました。

デジタル主体の音楽産業

CDの発明によってもたらされた音楽のデジタル化はパソコンやネットの普及などを経てさらに加速することになります。

音声ファイルMP3の登場

1991年にMP3(MPEG-1 audio layer 3)という音声データを圧縮する技術が開発されます。CDに収録されているデジタルデータをさらに扱いやすいように、ファイルの容量を音の劣化を少なく圧縮することができる技術で、.mp3という拡張子のファイルがそのデータです。

音楽のデジタルデータをさらに扱いやすいものにする技術によって、のちの音楽産業に大きな影響を与えるわけですが、このMP3は少し負の側面もあります。CD登場の際にデジタルデータの複製の容易さを懸念したレコード会社の不安が当たる形となりました。

パソコンが普及し始めると人々はこぞってCDをパソコンに取り込み、MP3ファイルとしていきます。やがてネットが普及し始めると、P2P(ピア・ツー・ピア)という技術を用いたファイル共有ソフト(NapsterやWinnyやWinMXなど)が登場し、違法コピーや違法ダウンロードが横行するという社会問題が起きました。

デジタルオーディオプレイヤーの流行

小さなMP3プレーヤー
小さなMP3プレーヤー

MP3という圧縮技術の登場や、フラッシュメモリなど半導体メモリの進化によって携帯音楽プレイヤーに革新がもたらされます。2001年にAppleのiPodが登場すると、ポータブルMDプレイヤーやCDプレイヤーより小型で軽量ながら音質のいい音楽をハードディスク5GB(約10時間分)も持ち運べるということで人々に衝撃を与えました。容量5GBで10時間と聞くと現代の私たちの感覚からすると非常に少ない要領に思えますが、CDやMDが80分しか収録できない時代だったので約8倍の音楽を持ち歩けたということなのでそれは衝撃ですね。

iPodは世界中で大流行し、MP3は音楽のデジタル規格として浸透することとなります。各メーカーもこぞってMP3を再生できるプレイヤー発売し、これ以降フラッシュメモリ搭載のデジタルオーディオプレイヤー(スマホを含む)が今日までスタンダードとなっています。

オンラインストアの整備

MP3が音楽規格のスタンダードとなるにつれて、わざわざCDを買ってきてMP3ファイルにして取り込むという手順を踏むことに人々は煩わしさを感じるようになります。

Appleは2004年にiTunes Storeを開設し、音楽をデジタルデータという形で販売することを始めました。CDをプレスし流通させるためのコストがかからないため1曲あたりを安く販売できることや、スマホの普及などとともにオンライン販売は徐々に拡大し、ついには2011年CDの売り上げを抜き去り今日に至ります。CDというメディアが過去のものとなり、デジタルデータを直接やり取りする時代が到来したのです。

音楽ストリーミングの登場

スマホで再生する音楽をストリーミングサービス
スマホで再生する音楽をストリーミングサービス

ダウンロード販売が最終形態かと思いきや、新たなスタンダードが次に訪れます。いくら容量が増えたとはいえ、アクセスすることのできる情報量が膨大な現代人にとっては、何千、何万の曲でも多すぎることはなく、逆にそれらを管理することを煩わしいと感じていくこととなります。

そこで、個人で音楽データを購入し管理するのではなく、管理された何千万曲の中から自分の好きな音楽を選んで扱える定額サービス、音楽ストリーミングサービスが登場し年々利用者が増えています。

音楽データを購入するのではなく、人々は月額を払って音楽を聞く権利を購入するというサブスクリプション型のこの音楽産業形態は、CDや音楽データという物を買って所有するという行為から音楽体験にお金を払うというある意味純粋な産業形態なのかもしれませんね。

これからの音楽産業のカタチ

いかがでしたでしょうか。今回は音楽産業の変化を媒体中心にお話ししました。

紙からレコード、レコードからCD、CDからMP3などのデジタルデータと媒体が変化するごとにビジネスモデルが変化していっているのは時代の流れというものですね。近年はレコードなどの再ブームなどもありますが、それでも主流は定額制音楽配信サービスSpotifyやAmazon Musicなのは間違いないでしょう。

デジタルデータからさらに別のメディアが登場するのは今の段階では想像できませんが、時代の変遷や生活様式の変化で音楽産業を取り巻く環境は変化して行くことが想像できます。時代の変化には常にアンテナを張って、メインストリームはどこにあるのかを分かっておきたいものですね。
ぜひ参考になれば幸いです。

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